福岡地方裁判所 昭和44年(ワ)580号 判決
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〔判決理由〕<証拠>を綜合すると、被告北原一宏は福岡マツダ販売株式会社のセールスマンとして稼働していたところ、姉婿の弟にあたる被告伊藤弘文から自社の販売する自動車購入の申込を受けたため、同社の了解を得て部内職員と同様の割引価格でこれを売却することを思い立つたのであるが、部内社員を買受名義人としなければ右のような割引を受け得ないため、昭和四三年二月二九日被告伊藤は前記会社から本件加害自動車一台を被告北原を買受名義人とし、被告伊藤を名義上の連帯保証人として、代金は四九八、六二〇円とする割賦払方式(但し、代金完済まで所有権を同社に留保する)によつて買受け、各割賦代金に見合う同社宛の約束手形はすべて被告伊藤が自らこれを振出して同社に差入れ、買受車両の引渡を受けたこと、このような売渡形式をとつた関係上買受車両の登録名義人は被告北原とし、保管場所も同被告の住所たる八女市大字本町二四となさざるをえなかつたし、以上の事実関係は同社においてもこれを知り、かつこれについて了解を与えていたこと、以上の経過で被告伊藤は直接同社から本件加害車の引渡を受け、代金もすべて同被告においてその支払を了した上車は専ら同被告が使用し被告北原がこれを使用したり、あるいはその運行によつて利益をえたりしたことはなかつたことをそれぞれ肯認することができ、右認定を左右すべき証左はない。以上認定の事実に徴すると被告北原は被告伊藤に対し、単に加害車につき名義を貸していたにすぎず、右自動車の運行支配や利益を収めていたとは認められないから、本件事故当時被告北原が加害車の運行供用者であつたと認めるのには十分でなく、同被告が運行供用者であることを前提として右事故により蒙つた原告の損害(人損)につきその賠償を求める原告の請求は他の判断をなすまでもなく理由がない。(木本楢雄)